「温泉の恋人」伊豆冷暖房工業株式会社・商工会青年部部長 森田浩史さん

水道や空調などの設備管理会社を営みながら、町のために東伊豆町商工会青年部の部長も務める、 森田浩史さんにお話を伺いました。

目次

自己紹介

東伊豆町出身でして、東京の学校を卒業した後は、都内の消防設備の会社に勤めておりました。転職や結婚といった転機を経て、約8年前の2010年に東伊豆町に戻ってきました。現在は3児の父でもあります。
仕事においては、冷暖房、トイレ、水道などの施工、改修工事、新築工事などをしております。その間を縫って、東伊豆町商工会青年部の部長として、企業間交流や町おこしのイベント企画などに携わっています。
 今回は私の仕事のこだわりと町おこしのイベントとして今も続いている、「石曳き道灌祭り」について語らせていただきます。

仕事について

私の仕事は入札やゼネコンさんの斡旋、お客様からの紹介から始まります。新築建物のエアコン、配管、ボイラーなどの施工、設置を担当します。設備は老朽化しますので、その後の日々のメンテナンスも請け負い、お客様と長いお付き合いをしていきます。また、ボイラーをはじめ設備は日進月歩で最新化します。都内での研修や勉強会に参加し、お客様によりよい提案ができるよう、最新の情報を入手することに努めています。設備について語りだしたら止まれませんし、止まりません。そのため、ここでは、お客様から学んだことと私が経営者としてありたい姿を当時のエピソードを交えながらお話しさせていただきます。

私のお客様のうちの一社に、地元の旅館さんがいらっしゃいます。旅館にとって温泉は生命線であり、その生命線の管理を任されています。温泉は生き物であり、時にトラブルが生じてしまいます。その旅館さんの温泉にもトラブルが発生してしまい、深夜の3時に社長さんから電話がかかってきました。
旅館社長:森田さん、温泉が止まってしまって、ちょっときてくれませんか?
私   :わかりました。すぐ行きます!
旅館社長:助かるよ。タンクで待ってるね。

私   :お待たせしました。 配管のどこかに問題がありそうですね。
旅館社長:なんとかなりそうですか?
私   :現時点では、なんとも・・早急に調べます。

私   :社長。配管がつまっており、全て開けて調べないと復旧できません。
旅館社長:どれくらいの時間がかかりそうですか?
私   :配管の長さを考えると、約2日です。
     給湯への切り替えを手伝いますので、
     明日も営業はできるかと思います。  
旅館社長:森田さん。営業できることと、
     お客様にご満足いただくことのは違うんだよ。
     朝一で全てのお客様に謝罪の電話をして、
     申し訳ないけど他の旅館さんにお泊り頂くよ。
私   :こういうときのために給湯があるんじゃないですか?
旅館社長:たしかにそうかもしれないけど、
     温泉を期待しているお客様に嘘をついて普通のお湯は出せないよ。
私   :そうですか・・では、早急に作業に取り掛かります。
結局この工事は2日かかり、この旅館さんは3日営業を停止いたしました。繁忙期の3日間でしたので、かなりの損失だったと思います。しかし、自分たちのこだわりを貫き、目先の売上よりもお客様に最大限ご満足いただくことを選ばれました。この自分たちのこだわりを貫く姿勢、お客様に対する真摯な姿勢はとても勉強になりました。

旅館や施設にお客様が滞在している時間のほとんどは、自分の仕事が終わった後です。深夜や明朝などに修理の依頼があることも多々あり、大変に感じることも事実です。しかし、旅館の社長さんから学んだ、お客様への真摯さを心がけ、仕事を通じても地域に貢献したいです。

「石曳き道灌祭り」のはじまりとこれから

現在部長を務めている東伊豆町 商工会青年部には、こちらに戻ってきた2010年くらいに加入いたしました。町を盛り上げたいという想いの下、扉を叩きました。しかし、その想いとは裏腹に、地区の部員はわずか数名でした。ほとんどが幽霊部員でした。地元の部員を増やし、みんなで盛り上げていきたいと考え、勧誘活動を積極的に開始しました。そのような中、開催が決定したのが、「石曳き道灌祭り」です。

2017年で第6回目を迎えたこのイベントですが、最初は隣町の稲取で催されていた、「石曳き祭り」が発端でした。運営の主体を稲取若者会から、商工会青年部に移したのが2012年です。太田道灌が指揮を執り、江戸城を造るための石を曳いて運ぶ姿をモデルにして、海岸通りに沿って大きな石を綱でお客様も含めたみんなで曳きます。その石の上に乗って石曳きの指揮を執るのが、侍大将です。第一回から第三回までは、私がこの侍大将を務めておりました。「石曳き道灌祭り」は、毎年少しづつ形を変え、現在は300名近くのお客様と共に海岸通りで石を曳き、クライマックスでは花火も打ちあがります。出店を増えてきて、観光パンフレットが出来上がるまで大きなイベントになってきました。

そして、第四回目から、後輩に侍大将を引き継ぐことができました。誰か中心の人が抜けたら、終わり。それでは意味がありません。誰かに引き継げてそれが意味を成すのだと考えます。当初2名だった部員も徐々に部員は増え始め、現在では約20名です。部員の数が全てではありませんが、思いに共感してくれる人が増えた結果だと思っています。

「石曳き道灌祭り」はこれからも続きますが、きっかけであり始まりです。このような地域活動を通じて、お客様をおもてなす気持ちを学び合い、東伊豆に来てくれたお客様によりご満足いただきたいです。商工会青年部は、自分たちが誇りに持てるような、地域から信頼されるような団体でありたいと考えています。地域の壁は当然ありますが、切磋琢磨して競争する部分と伊豆全体を考え協力する部分。これらのバランスをうまくとり、地域としての発展に貢献したいです。