2018年5月15日 更新

昔は当たり前にいた『蛍』をもう一度。 奈良本ホタルの会 木村明良さん

10年以上続いてる奈良本けやき公園の蛍祭り。その立ち上げメンバーであり、今も陰で会と祭りを支えている、木村明良さんにお話を伺いました。

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自己紹介

奈良本在住の木村明良です。今は引退しておりますが、昔は町の役場に勤務しておりました。引退した今でも、地域に貢献したいという想いは変わりません。今の私と地域との接点の一つが、「奈良本ほたるの会」です。

今でこそ10年以上続いているイベントですが、発足時は、蛍が住める環境とは、程遠い現状でした。「今でも十分に自然が豊かな田舎じゃないの?」と思われるかもしれません。自然が豊かな田舎であることは事実ですが、蛍の場合はそう簡単ではありません。
 私達、「奈良本ホタルの会」は発足して14年目になりますが、ここで「奈良本ホタルの会」の発足とこれまでの歩みについて若干話をさせていただきます。
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『奈良本ホタルの会』のはじまり

私達が住む奈良本の中腹に、以前ホテルがあった土地を町が寄附受領し空地となっていた土地がありました。町は、ここに中山間地域の振興発展事業の一環として公園整備事業を計画し、その中に研修棟(名称:きぼうの館)、広場、池、小川、足湯、焼き釜等が整備されました。
 そこで私達、当時の地区役員8人は2年の役員任期満了に際して、ここに整備された小川で、以前は初夏の風物詩として日常の生活の中で当たり前のように見かけていたホタルを何とか復活できないかと話し合ったことがきっかけでした。とはいうものの、ホタルに関する知識など皆無で何から始めていいのか全く分からない状況でした。幸いにも近隣にホタルに関する識者が居ましたので、その方の支援を得られることになったので、皆で「やってみよう」ということでスタートしました。
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ゲンジホタル再生息のための条件

ホタルと一言にいってもその種類は日本だけでも50種弱、世界では2、000種前後といるといわれております。日本で一般的にホタルというと直感的に、水生の「ゲンジ及びヘイケホタル」、また陸生の「姫ホタル」等が思い浮かびますが、中でもゲンジホタルは体型も一番大きく放つ光も強く明るいので多くのところで見かけられます。私達が取り組んだのも「ゲンジホタル」です。

そして、昔はその辺りにいて珍しくもなんともなかったゲンジボタルがいなくなった理由。ゲンジボタルは、下の「①水」、「②エサ」、「③土」、等々の条件が全てそろわないと生息できない、とても繊細な生き物であることがわかりました。

①流れのあるきれいな水
ゲンジホタルには綺麗な水と急流でない小川のようなところが最適です。
昭和40年代初頭までは、この辺では水道は普及せず井水や湧水の外田等に引水する小川等の水を生活用水或は農業用水として使用しておりましたが、このことは水質の問題も無く、また量も安定して確保できていたということで、人間の生活維持のみならず淡水魚介類の生息の為の条件が整っていたということになり、ゲンジホタルの餌となるカワニナも当然に生息しておりました。
ところが時が経つにつれて土地開発が進み生活、社会環境の変化とともに良好かつ安定した水量の小川等が次第に無くなり、必然的に餌のカワニナを始めとして淡水で生息する昆虫類や魚介類も減少の一途となってしまいました。
このような状況の中で平成9年に前述の「けやき公園」内に人口の水路ができたのです。

②餌のカワニナ
次に餌です、ゲンジホタルは「カワニナ」という巻貝しか食べません、水の中で約9月生活しますが、その間に1匹の幼虫が20個くらい食べると言われ、非常に食欲旺盛な昆虫です。このカワニナを何処で、どうやって確保するのか、当時、まだ区内に僅かに残っていた水路でのカワニナの存否の調査から生息が確認できたので、そこから採取して公園内水路に放流、増殖に成功し必需の水と餌の確保の課題はクリアーできました。

③水辺付近の柔らかい土地
ホタルの幼虫は水中で6回の脱皮を繰り返しながら9か月間水中生活をした後4月上旬の雨の日に陸に上がって付近の柔らかい土中にもぐり土繭を作って蛹になり、それから40日前後の5月中旬頃から飛び始めますので、この土中生活ができる場所も必要不可欠なのです。
 
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『奈良本ホタルの会』10年のあゆみ

前の段で記述したような経過を経て今年で14年目となります。振り返りますと、何もかもゼロからのスタートでした。
 ホタルの飼育面についてはカワニナの確保と増殖、ホタルの確保と採卵、孵化から飛翔までのノウハウ等々、良き指導者のもとで比較的スムースにできたと思っております。
 施設関係については、まず採卵箱、飼育槽の作成とパイプでの水の引き込み、更にはこれらを設置しておく3畳ほどの「ホタル小屋」の建築等をすべて素人の手作りでやりました。一方、放流する水路の水辺一帯は固く転圧された広場になっており、上陸したホタルの幼虫が地中に潜れず死滅するという事態や、上陸できて地中生活中の地に草刈り業者が入って飛翔不能ということもありました。そこで、公園内の水路から引水するホタル用の支流を別の場所にと考え、町の許可を得て会員の総力で土工事を行ない3筋の水路が完成。以後、毎年この場所にホタル小屋で育てた幼虫の放流ができるようになり、安定してホタルの飛翔が見られるようになりました。
 その他、この水路は人工なのでその取水は非常に管理が難しく、季節的には春は花弁、秋には落ち葉等々での取水口の詰まり、台風や大雨時の土砂の堆積や濁水、その外要因不明による汚染水の流入等々、水の管理には日々気を使うところです。
この幼虫の放流には、地元小学児の体験教育の一環として参加していただいておりますが、数年前からは熱川温泉観光協会による、「ホタル観賞会」が実施されるようになり誘客の一助になっているのかなと思っています。
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少しづつ、一歩づつでも

先陣立って祭りの運営には関わってはおりませんが、立ち上げメンバーの一人として、このイベントが少しでもよくなればと、より多くの方にホタルを観賞いただけたらと思い、陰ながら行動しています。

例えば、竹の間接照明の設置。会場の誘導路の電灯が、ショートし漏電してしまったことがありました。そのため、竹の上からふたをする、竹の間接照明を作り設置しました。

また、ホタルはオスとメスで光り方が違うのはご存知ですか?発光器が異なるため、メスは四角く、オスは丸く光ります。この違いを観光客のお客様にもわかっていただけるよう、「オスとメスがわかる採卵箱」を設置いたしました。自然界では、メスが飛んでいるシーンはほとんどみられません。採卵箱には、オスとメスが入れてあり、ホタルが光るのを近くでみることができ、更にはオスとメスの違いがわかりとても好評です。

地域の女性部の「くらしの里奈良本」の皆さんが、ホタル提灯手作りしてくれました。ホタルの近くまではいけませんが、この提灯をもちながら初夏の川辺を散歩していただけたらなと思っています。中々風流でしょう。

このように、みんなと力を合わせながら、少しづつでも、一歩づつでもよくなれるよう、支えていきたいです。
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