2018年1月7日 更新

お客様からより選ばれる温泉街を目指して 熱川観光協会 稲葉義仁さん

熱川温泉のまとめ役、熱川温泉観光協会 稲葉義仁さんにお話を伺いました。

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自己紹介

熱川温泉に生まれ、熱川温泉を出た後は、東京でカード会社に勤めていました。長男ということもあり、いつかは、熱川温泉のために働きたいとずっと思っておりました。時は遡り、2011年。東日本大震災の影響により、熱川温泉の観光客数は激減しておりました。「このような中、自分は熱川温泉のために何ができるのか?」。これに対する自分なりの答えとして、熱川温泉全体の集客や管理を役割とする、熱川温泉観光協会へのドアを叩きました。
現在は観光協会の職員として、どうしたらよりよい温泉街、観光地にできるかを常に模索しています。具体的には、熱川温泉のシンボルである年3回の「花火大会」、人気が急上昇している「ちびっこつかみどりフェスタ」等のイベントの企画・運営から、旅行会社と連携した宿泊施設への集客、町の定期掃除まで、様々なことを担当しています。今回はこの場を借りて、「熱川温泉の紹介と観光協会の役割」と、私たちの役割がうまく表れた「湯めぐりチケット誕生秘話」、「熱川温泉のイベントとキャンドルナイトの裏側」をお伝えさせていただきます。
ちびっこつかみどりフェスタ

ちびっこつかみどりフェスタ

7月の下旬と8月の下旬に開催される、ちびっこつかみどりフェスタ。魚を放流し、お子様につかみどりをご体験いただきます。捕まえた魚は、BBQ形式、そのまま焼いてお召し上がりいただけます。
また、熱川の宿泊施設にご宿泊のお客様は、無料でご体験いただけます。 
中心でお子様に説明をしているのが私です 笑

熱川温泉の紹介と観光協会の役割

熱川温泉は伊豆半島の東部、東伊豆町にある湯量が豊富な温泉街です。その豊富で高温な温泉を活かした約20の宿泊施設、干物などのお土産販売店、飲食店、ワニや稀少な動植物が観賞できる熱川バナナワニ園がございます。約50年前、視聴率50%を記録し一役を風靡した「細腕繁盛記」の舞台でもございます。
そんな熱川温泉における観光協会は、熱川温泉の宿泊施設や飲食店など、観光に関連する事業主で構成されています。協会員はみんな、熱川温泉をよくしたいという気持ちを持っています。同じ思いを持ったみんなが集まるとうまくいくのか。現実は、必ずしもそうではありません。そこで私たち観光協会職員の出番です。熱川温泉全体のことを考え、協会員の意見を調整し、みんなが最低限納得できる方向性を決定します。とはいいましても、我が強い旅館の社長達や、引退した熱川温泉のご意見番の方々、エッジの利いた飲食店の店長など、一筋縄ではいきません。気迫に押され心が折れそうになったこと、理不尽で朝令暮改な意見に、唇をかみしめたことは数えきれません。
このご時世、頑張ってお客様に満足していただこうと考えるのは、熱川温泉だけではありません。一致団結して新しいことに挑戦し、お客様にご満足いただけなければ、他の温泉地を選ばれてしまい、衰退する一方です。唇をかみしめ直し、お客様からより選ばれる観光地を目指し、熱川温泉を盛り上げていきたいです。
熱川駅と湯けむり

熱川駅と湯けむり

湯めぐりチケット誕生秘話

「湯めぐりチケット」は、熱川温泉の全ての宿泊施設と、海岸沿いの「高磯の湯」にてご利用いただける日帰り温泉のチケットです。3枚つづりで1セットとなっておりまして、1セット1,200円にて販売しています。今でこそ熱川温泉の全ての宿泊施設が参画してございますが、湯めぐりチケットの発足時は、そう簡単ではございませんでした。実は、現在の湯めぐりチケットが発足する以前も、熱川温泉の日帰り入浴チケットはありました。しかし、あの施設は参加する、しない、あの日は入浴できる、できないといったように、てんでばらばらでした。一体感のない中途半端な日帰り温泉のチケットとして、2013年まで姿を残しておりました。

震災後の2013年。熱川温泉として、お客様が激減している時期です。熱川温泉の全員が協力して、熱川温泉に来たお客様にご満足していただく必要がある。その一つのとっかかりが、現在のゆめぐりチケットでした。「熱川温泉全施設参加、低価格、除外日無し。」。これを目標として、全ての宿泊施設を回り説明いたしました。「大浴場の清掃をお前がやるのか?」、「宿泊代を観光協会で負担しろ」など、かなり厳しいことをいわれたこともありました。熱川温泉の危機を感じているのはみんな一緒です。一つの施設が参画を決定して、その社長さんと次の施設を回り、またみんな一緒に次の施設。結果として、ほとんどの施設が参加を決定してくれました。全施設参画まであと一押しです。

しかし、全施設参画の最後の壁として立ちはだかるのが、頑固で有名な旅館の社長さんです。「自分の施設を選んでくれたお客様に、宿泊以外の方の大浴場利用によって迷惑をかけたくない。」この一点張りです。参画を決めてくれた社長さんとの怒鳴り合いにまで発展してしまいました。今後の方向性について、その社長さん含む観光協会員全員で話し合いました。一番のポイントは、熱川温泉全施設参加です。全ての施設に参加をしてもらわなければ、意味がありません。そのため、その社長さんを含む多くの施設さんが懸念していた、繁忙期の日帰り入浴、つまりは除外日について、落としどころを模索しました。一つの案として、「全体としての除外日は設けず、詳細な受け入れは各施設の判断に委ねる」という提案を投げかけました。忙しくてどうしても受け入れが厳しいときは、観光協会を紹介してもらい、観光協会が日帰り入浴の可能な他の施設に打診をする。この案にその社長さんも首を縦に振り、熱川温泉全施設参加の湯めぐりチケットが完成いたしました。

 温泉地の全宿泊施設で利用できる日帰り入浴チケット。同じようなことをやっている温泉地は多く、特別な取り組みであるかといえば、そうではありません。しかし、様々な意見が飛び交う中、みんなで熱川温泉をよくするために踏み出した一歩です。この一歩は終わりではなく、始まりです。これからも、熱川温泉一体となって、よりよい温泉地を目指していきます。
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熱川温泉のイベントとキャンドルナイトの裏側

熱川温泉では、年3回の花火や、5月・6月の蛍祭りなど、月ごとに様々なイベントを開催しております。宿泊施設さん、飲食店さんはもちろん、地元のガス屋さん、電気屋など、縁の下の力持ちといえる人まで一致団結して、イベントの運営に取り組んでいます。詳細は下記のイベント一覧をご覧ください。その中でも、3年前に始めたキャンドルナイトについて少しお伝えさせていただきます。

キャンドルナイトは、8月を除く、各月の最終土曜日の19時から21時まで開催しています。熱川の海岸沿いに約2000本のろうそくが並び、夜の熱川温泉を彩ります。3年前に当時の観光協会長が他の温泉地のキャンドルナイトに刺激を受けたことがきっかけでした。お客様の満足度を高める、ロマンチックで壮大なキャンドルナイトをしたい。しかし、ロウソクと、ロウソクの入れ物を普通に購入したら予算が断然足りません。どうしたらキャンドルナイトを限られた予算の中で始められるか。これを当時の協会長を中心に知恵を出し合いました。お金がよりかかるのは、ロウソクの入れ物でした。ロウソク入れをペットボトルにしてビーチの砂で固定することにより、入れ物の費用を0にできます。これで予算面はクリアできました。あとは、キャンドルを設置する人員です。なるべくお客様が多い、土曜日を開催日として考えておりました。宿泊施設や飲食店は当然稼ぎ時。人の手配に頭を悩ませることが目に見えておりました。そのため、土曜日が休みの電気屋さんや設備関係の人を中心にお願いする方向性で考えていました。しかし、いい意味で想定外なことが起きました。「社員をキャンドルの設置に出すことはできないので、自分がいく。」宿泊施設のオーナー自らが一人、また一人と手を挙げてくれました。

午前10時くらいにペットボトルへの砂入れとロウソク入れ、完成したものを軽トラに。午後6時に海外沿いにキャンドルの設置。午後9時にキャンドルの撤収。あの頑固な社長が作業着で軽トラを運転してくれているのは違和感がありますが、どこか微笑ましいです。このように、熱川温泉キャンドルナイトは運営されています。正直、まだ改善点はたくさんあります。みんなで協力して、お客様により満足いただけるイベントに育てていきます。
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5月下旬:けやき公園蛍祭り
6月上旬:大沢公園蛍祭り
7月22日: 熱川温泉花火大会
7月下旬・8月下旬:ちびっこつかみどりフェスタ
8月:YOUビーチ
10月下旬:石曳道灌祭り
12月24日:クリスマスファンタジア
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