2018年3月16日 更新

世界各国で料理の武者修行。そこで培った「時間」という調理技術。 ここでしか味わえない隠し味とは?? ペンション エルブルズ 荻嶋博司さん・留美さん

山と海、両方を見下ろすという伊豆でも稀有なロケーション。シェフの個性が光る洋食は、近辺の旅館のオーナーが板長を連れて勉強に来るほど。ペンションエルブルズ 荻嶋博司・留美夫妻にお話を伺いました。

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二人の歩み

はじめまして。ペンションエルブルズの荻嶋博司、荻嶋留美です。
私はさいたま市出身で、東京、埼玉のフランス料理店で料理人としてのキャリアを歩み始めました。視野を拡げて料理を見つめたい、腕を上げたいと考え、22歳の時に渡米いたしました。3年間アメリカにて料理の腕を磨き、その後スイスで5年間、30歳の時に日本に戻ってまいりました。

一方妻は、横浜出身でございまして、その隣の川崎で5年間獣医をしておりました。その後は、ペットフードの会社で商品開発に携わっておりました。
全く歩んできた道が異なる私たちですが、縁あって出会い、私が34歳の時に結婚いたしました。昔から自分の店を持ちたいと思っておりました。「どこに店をだすか?」これを2人で考えた結果、海と山が両方楽しめる伊豆、その中でも海と山、両方を見下ろせる天城山の中腹に決めました。

この場を借りて今回は、私から「料理に対するこだわり」、妻から「ロケーションとエルブルズならではの調味料」についてお話しさせて頂きます。
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食材のポテンシャルを最大限引き出すために

料理人として腕を上げるため、数か国でレストラン、結婚式場など様々な形式の料理を調理してまいりました。いよいよ自分のお店を出す際、どの国の料理で勝負しようか。多くの料理を学んできた分、これは相当迷いました。お店の場所は妻と相談し、伊豆の山腹と決めておりました。そのため、野菜や肉など、伊豆の食材と相性がいいイタリア料理と、私の得意な料理であるフランス料理の混同料理で勝負することを決めました。

私の料理のこだわりは、食材を最大限活かす、調理の「時間」です。例えば、シンプルな食材である野菜。「野菜に調理なんて関係ないでしょ。」と思われるかもしれません。しかし、野菜がその野菜の持っているポテンシャルを最大限発揮できるのは、切ってから30分以内なのです。結婚式場やレストランなどで働いていた時には、3時間前などから仕込みをすることが普通でした。それでは野菜の本来持っている甘さや、酸味が損なわれてしまうのです。また、それぞれの野菜は、一番旨味がでる場所が異なります。皮の付近が一番おいしい野菜は、皮の部分を。根の付近が美味しい野菜は、根の付近を。予約数と調理する数が決まっている宿泊施設の料理形式の強みを活かし、一番おいしい部分を、一番おいしく出せる時間でお客様にお届けしています。お客様から、「子供がこんなに野菜を食べたのは初めて!」、「20年一緒にいて初めて主人がセロリを食べた」などというご意見をいただくことがございます。自分のこだわりをご評価いただき感無量ですね。

また、エルブルズのお肉料理にとって、「鹿」は外せません。何件もの業者さんの工場を見学させていただきました。こちらも「時間」にこだわり、猟をしてから4時間以内に内臓を摘出し、お肉の鮮度を保たれている業者さんから仕入れています。

お客様から、「全体として飽きない。量が多いけど、全部食べれてしまう。」というお言葉をいただくことが多々ございます。この「時間」にこだわる調理により、食材の持っているポテンシャルを最大限発揮し、食材を組み合わると、「一口ずつ味が異なる飽きない料理」が提供できます。
これがお客様からこのようなお言葉を頂ける背景にあるのかもしれません。

最後に、エルブルズには欠かせない、隠し味がございます。
それはこの後、妻からお話いたします。
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(左側:バーニャカウダ)「時間」にこだわったバーニャカウダ。お客様に野菜本来の美味しさをお伝えします。アンチョビのソースがアクセントとなり、野菜本来の美味しさを一口ごとに毎回お楽しみいただける人気料理です。

(右側:鹿肉のミートソース)「素材」にこだわった鹿肉のミートソース。中伊豆の鹿肉を使用しております。鹿肉独特の味わいが野菜と融合し、それぞれの良さを醸し出します。牛肉や豚肉のミートソースでは実現できない現象です。
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自然を嗜み、ゆとりを持った心でお料理を。

天城山の中腹に位置するエルブルズ。歩けば棒にあたるくらい頻繁にみることができる「鹿」や「猪」、まるでジブリの世界かのような「不知沼」、私たちが産まれる遥か前から木漏れ日を産んでいる周辺の木々など、周辺は手付かずの自然で溢れています。私は獣医をしていたこともあり、生物が大好きです。そして写真撮影が趣味であるため、近隣の自然をよく撮影します。四季折々に変化する自然。こちらにお店を構えて16年が経ちますが、飽きるどころか毎回違う発見がございます。自然は当然私たちのものではございません。しかし、私たちはこの自然も含めてペンションエルブルズだと考えています。旦那が最後に皆様に投げかけた、エルブルズの隠し味。それは、「自然に触れてゆとりを持てた心」です。

駅周辺や温泉地など、もっと伊豆らしい場所に店を構えれば、より多くのお客様にご来館いただけるのかもしれません。「山道を車で登るのが不便でもう来たくない。」とおっしゃるお客様がいらっしゃるのも事実でございます。しかし、駅周辺や温泉地では、私たちの目指すエルブルズの料理はお客様に提供できません。山道を登りながら、またはお散歩をしながら自然にふれていただくことで、生まれる心のゆとり。その心のゆとりが隠し味、調味料となり、エルブルズの料理が完成します。

山道を登りながらドアの向こうに見える絶景なる海や山、そして感じるワクワク感。お散歩をしながら吸い込む新鮮な澄んだ空気や、普段は見ることのできない生物達。ぜひ、これらの自然とエルブルズのお料理を一緒にお楽しみくださいませ。
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館内入口にお散歩マップや写真を飾ってございます。これらの写真の動物や植物は、近隣の美しい自然のほんの一部です。ぜひ、お散歩をお楽しみくださいませ。
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私が撮影した近隣の自然の写真を編集した写真集です。四季ごとに雰囲気が変わる「不知沼」。この写真集がお客様から大変ご好評をいただいてございます。
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